まさかという坂
 

■ 2004年夏に起こったまさか#2

当時の職業としては、一流と言われた商社への転職のチャンスをつかんだのである。
彼は働きながら勉強をして、その当時は大手商社の一角であった、某大手商社に見事に合格し大きなステップアップを果たす。
この出来事は、それまで苦労を重ねてきた叔父が少し報われた瞬間であった。
彼は転職後も持ち前の根性と忍耐力で商社内で頭角を現し、周りからも認められる存在となっていく。
そして二度目の転機、社内で知り合った女性と結婚することとなった。
私も盛大な結婚式に母親(長女)と共に参加したことを覚えているが、祖母(母)は参加しなかった。
参加しなかった理由は分からないが、母親として出席したかっただろうに、父親も再婚していたこともあり、義母に気を使ったのかもしれないし、叔父に合わせる顔が無いと思ったのかもしれない。

その後、叔父に待望の娘が生まれ、家を購入し、理想の家庭を築き、共働きではあったが苦労した幼少の頃と違った幸せな時をすごす。
やがて彼はそれまでの努力が報われるときがやってきた。
当時としては考えられない中途採用者による大手商社の支店の支店長に抜擢されるのである。
しかし、ここから少しずつ幸せの歯車が狂い始める。
かつて飛ぶ鳥を落とす勢いだった商社も、国内の流通革命により淘汰の時代に突入することになる。
商社は生き残りをかけ事業形態を改革していかなくてはいけなくなった。
数々の大手商社が苦戦する中、叔父の会社も例外ではなかった、改革の流れに乗り遅れてしまい、生き残るために合併の道を選ぶこととなる。
しかし、そんな中でも彼は会社を再生させるべく力を尽くし、その明かりが見えてきていた。
そういったなか寝たきりになっていた叔父の父親は亡くなった。
こういては失礼だが、周りの人々にとってチョットほっとした瞬間であった。
会社も合併後軌道に載り結果が出るのを待つまでになり、娘も大学の卒業をまじかに控えるまでになり、新たに家を新築するなど第2の人生に備えて動き出していた。
実はこの頃、私は約20年ぶりくらいに彼と会っているのだが、それまで私の仕事の関係上、近くに居なかった事もあり合っていなかった。
しかし、私の職場が彼の住んでいた地域に移転することになって、会うことになるのだが、今思えば何か不思議な再会であった。

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